その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「でもね?アリス。やっぱり入らなきゃダメだよ」
どういう意味だ?
そう訝しげな顔をした俺に、二人が説明した言葉はこうだった。
例えば、休日に「公園へ行く」とする。その時、公園で遊ぶことはしなくても、公園を見ただけで帰ろうとすることはない。学校へ行くだって、遊園地に行くだって、少なくともその名称の付く施設内に入っているのは違いないのだ。城だってそうだろう。まあ、俺は城とかに詳しくないから全然出て来ないけど、例えば名古屋城に行くって言っても、名古屋城に入るとは限らない。でも、名古屋城の敷地内には入るわけだ。
つまりこいつらが言いたいのはそういうことで・・・
確認がてら、声に出して尋ねる。
「つまり、白の城内に入らなくても、門くらいはくぐれってことか・・・」
「そ」「賢いね」
賢いなんて、生まれて初めて言われたけどな。
でもそう言われてしまうと、他に逃げ道もあったのかもしれないけど、馬鹿な俺は全然思いつけなかった。ここで入らなければ契約違反で殺されるんだろうか・・・?
悶々と悩んでいると、和樹が俺の右肩をぽんと叩いた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷