その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「和樹、なんで送ってくれないの?」
「何言ってるの?和希が受け取ってくれないんでしょ?」
むっとした顔で、二人がにらみ合う。ちょ、俺をはさんで喧嘩しないでくれ!ケンカするにしても怖いからとりあえず和樹、そのナイフしまってくれ!
和希の手を俺が放した瞬間に、彼女の手に和樹の持っていたサバイバルナイフが瞬間移動した。険悪に睨みあっていた二人が、驚いた顔でそろって移動したそれに目を向ける。それから、俺をじっと見つめてきた。え?何?俺何かした?
わたわたと動いた俺が面白かったのか、二人が同時に笑いだした。
「そっか、そうだよね、君はアリスだ!」
「アリスが触ってたんじゃ、そりゃそうだよね!」
なんか・・・予想と違う感じか?それにしても、服部、愛川、打海にこいつらと、どうにも笑い上戸が多いようだな、この世界は。
さんざん人を笑った後、涙を拭きながら、和希が言う。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷