その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「なあそれって・・・」と口を開いたところで、目の前に異様な光景が広がった。
地上に入道雲が広がっている、なんていったらポエマーだろうか?でも俺にはその表現しか思いつかなかった。
水色の木々に囲まれて、末広がりの巨大な白がそこにあったんだ。この「白」ってのは誤字変換じゃない。本当に白だったんだよ。建物の表面の凹凸すら見えないくらいに真っ白で、薄く差す影がかろうじて入口や窓の存在を見せているほどだ。
また、形も異様だった。先ほど末広がりって言ったけど、それはあくまでも大雑把な話だ。日本家屋とかを彷彿とさせるけど・・・違うな。そう、あれだ。首里城とか紫禁城とか、そういう感じだ。日本ってか中国ってか解らないけど、まさに東アジアの城って形だ。良く見ると屋根も瓦っぽい。
ってか、そうだ。可笑しいんだよ。今まで俺がこの世界で見てきた建物は、赤の城も公爵夫人の家だって、みんな西洋風だった。とんがり屋根でレンガ造りで、テーマパークや童話に出てくる、まさにそれと同じだ。なのに、なんでここにきて東洋風なんだ?
「どうしたの?アリス」「間抜け面だよ?アリス」
黙れ和樹、間抜け面なのはもともとだ。しかし何をどうしたらこの白さが保たれるのやら・・・
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷