その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「そうだよ!門が使いたいんだ!王様になりゃ帰れんだろ!」
しかしそれを彼らは嗤わなかった。いや、むしろ逆だ。目を輝かせて感動したんだ。ただ、次のセリフはもはや馬鹿にしているとしか思えなかったけど。
「門ってあの?鍵守が守ってる?本当にあれ使うの?」
「っていうか初めて見たよ!アリスに会ったのも初めてだけど、白の城にある資料にもそんなアリスの話は書いてなかったもん!」
「ホントだね!聞いたこともない!」
「みんな知らなかったのかな?」
「でもみんな過去の『アリス』の話知ってたよ?」
・・・ん?
「ああ、あの女王になったアリスだよね!」
「そうそう!あの門から入ってきた小さなアリスだよ!」
え?ちょっと待て?それは童話のアリスじゃないのか?女王になったなんて知らないけど、少なくとも小さな女の子が主人公だったのは間違いない。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷