その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「別に戦闘で勝てなんて誰も言わないって」
もう二人にまでばれるようになったか。俺の考えは外に駄々漏れらしい。笑い飛ばした和樹に代わって、和希が教えてくれる。
「本当になんでもいいんだって」
「馬鹿さ加減なら自信がある」
「それ下回ってるって言うよね」
冷静に指摘するなよ、ただのギャグだ!いや、悲しいかな事実だけどさっ!
くそぅ・・・。王様になれれば許可なしでも扉が使えて、案外さっさと帰れるんじゃないかと思ったのに。世の中はそんなに甘くないんだな・・・
がっかりとうなだれる俺を、二人が不思議そうに見てくる。なんだよ、帰りたいんだよ、俺は。
「もしかして・・・王様になろうと思ったの?」「もしかして・・・本気で王様をめざしたの?」
こいつら、サウンドするならサウンドするで同じ言葉を言ってくれよ。双子とかじゃないやつらに要求するのも無茶かもしれないけどさ・・・。それに、帰りたいって思ってる人間の前にその話をぶら下げれば飛びつくだろ!あれだよ、馬にニンジンってやつだよ。なんか違う気がするけど。
もういっそ馬鹿だと嗤ってくれ。そう思って、項垂れていた顔を挙げてため息まじりに叫ぶ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷