その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「それって要は、俺が願えば世界が変わるってこと?」
「そんな単純な物じゃないよ」
「そうそう。『アリス』=『王族』ってわけじゃないしね」
二人から同時否定を食らった後の説明をまとめるとこうだ。
確かに「アリス」は王様になれるらしい。が、王様になると決まっている「王族」とは違い、つまりは・・・そう!王の資質があるってことらしい。現実世界に置き換えると、王族はまさしく王子や姫、対してアリスは資質を持っただけの一般人ってところだ。何もしないで王様にはなれるほど甘くない。
では何をすればいいのか?それはとても簡単な話だった。
王族を上回ること。
それが条件だ。上回るっていうと、どんなことでもいいのかと思うところだが、実際そうらしい。そう言われると簡単なようだが、当然生易しいものではない。上回る、という言い方を別の表現に変えるなら、すなわち「負かすこと」だ。
「王族を・・・負かす?」
「そう」
勝ち負けという単語をこの世界で聞くと、つい戦闘かと思ってしまう。戦闘なら勝ち目がない。のほほんとした赤の王があの速さで動くんだ。とてもじゃないけど敵わない。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷