その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「いつあたしたちの存在ができたのかって言われても解らないよ?」
「そうそう、或る日僕らはこの世界にいて、その時から僕らは僕らだし、今と何も変わらないし」
人じゃない?この容姿で、同じ言葉を話しているのに?王族のように支配欲があったり、柳崎のように慕う気持ちがあったり、鷲尾のように笑ったり、宝亀のように考えたりしてるのに?こいつらだってそうだ。二人でいるのはきっと恋情じゃなくとも好きだからなんだろうし、それはとても人間的だと思う。
「この世界の人はみんなそうなのか?」と聞く前に、
「アリスの特権についての説明続けるよ?」と言われてしまい、タイミングを逃した。そちらも気になるので、打ち切ることもできない。
「ともかく、他の人は王族になれない。どんなに才ある人物だろうと、この世界を支配することができないんだ」
「する気が起きないって言う言い方もできるけどね」
和樹の説明に、和希がケタケタと笑って注釈を入れる。その注釈はいらなくないか?
この後もこんな感じでだらだらと続いたので、久々にまとめて説明しよう。
王族には王族特権と言う者があり、王族でしかできない様々なことがあると言う。扉の行き来というのもその一つで、また能力を使える使えない、というのも実は王族が今「自分以外の者も能力が使える」と規定しているから使える物らしい。つまり、この世界を左右できる存在ってことだ。これは赤と白に一人ずつ男が生まれるものだそうで、女性は男性の望む存在が発生するのだそうだ。大変羨ま・・・いえ、なんでもございません。
けれども「アリス」はこの世界にとっては部外者の存在であり、このルールに縛られないのだと言う。説明してる俺も良く解ってないからうっだうだなんだけど、つまり「アリスは後発的に王族になれる」ってことらしい。この世界をすべる能力、ないしは世界に影響を与えることができる存在ってことだ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷