その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「子供だよ子供。王様の子供!これならわかるだろ」
「子供?子供って何?生き物?」
そこで初めて気が付いた。俺の知ってる限り、不思議の国のアリスに子供は出て来ない。そして言わずもがなだが、「王子」なんて出て来ないのだ。王子がいない世界で、子供の存在がない世界で、その言葉を説明する術はない。
でもそうなるともう一つ疑問が生まれる。それはつまり・・・
「あんたら、どうやって生まれたの?」
「生まれる?」「どうやって?」
人から生まれないのに難で彼らが存在するのか?彼らの親たる存在はないのか?言わせてもらうと、これは好奇心じゃない。恐怖心だ。もともと俺の常識はこの世界では通用しない。でも、同じ人間同士、まだ通じるものがあると思っている面もある。
けどもしそれが、化け物相手だったら?何があろうと身の保証たるものがない。相手が何を考えてるのか、全く解らないからだ。考え方の流れ方も測れない。
そんな俺の不安を知る由もなく、彼らは残酷に言い放った。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷