その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「そう!アリスの特権ってこと!」
わかんねぇわ。思わず肩を落とした。けれどもどうにも、がっかりするのは早かったらしい。
和樹は量の人差し指をぐるぐると糸巻きをするように動かしながら、和希に目を向けたりして話を続ける。
「王族になるっていうの人は決まってるんだよ」
「存在ができた時からね」
それは言われなくても解る。俺の世界だってそうだからな。余計な説明をはしょってもらうために言っておく。
「当然だろ?王様になるのは王子って決まってる」
「王子?王子って何だい?」
「王様になる人の事をそう呼ぶの?」
・・・ん?話がずれた。どういうことだ?
「いや、王子だよ王子。お・う・じ・さ・ま!あんた・・・じゃなくて、和希・・・じゃ解んなくて・・・」
「ダム?」
「そう!ダムだって小さい頃憧れただろ?」
「王様になりたいだなんて思ってないよ?」
女なんだから、その場合は女王だろうが。でもやっぱりずれてるな。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷