その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「本当に知らないの?」「本当に知らないのか!」
あれだけ考えて和樹しか説得されてくれてねぇじゃん・・・。
さっきからずっと一緒に行動してて解ったけど、同性だからか解らないが、和樹の方が和希より物分かりがいい。本気で突飛なことを言いだしたりやりだすのは大体和希の方で、その悪ノリに和樹が乗っているという感じだ。
まぁ、そんな分析をしたってしょうがない。とにかく今はこいつらからでも情報を集めないと、逃げる隙も狙えない。
「本当だって言ってるだろ?で、何なんだよ、それ」
「能力の話?」
「和希、あんたわざとだろ」
「え?僕何も言ってないよ」
「・・・・・・」
今の和樹の発言も絶対にわざとだ。ってかあのやり取りだけでどっちがディーでどっちがダムだか、そんな区別つくものか。俺はどっち、と視線で選別しない逃げ道を作ってから、とりあえず「ディー」の方に尋ねてみた。
「どういうことか教えろよ、『ディー』」
気持ち的に和希なら外れ、和樹ならあたりだ。
「えー、面倒だなぁ」と答えたのは和樹の方だった。よっしゃ、あたりだ!
なんだか難しい説明だったのか、和樹は「うぬぅ・・・」と唸りながら、頭を抱える。少し申し訳ない気分になるな・・・。
しばらくしてから、不意に和樹が閃いたようにポンと手を叩いた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷