その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「どうしてそう思った?」
「チェシャ猫が言ったから」「うつみんが言ったから」
誰だよ「うつみん」って。いや、解るけどさ。何故それだけで解るんだ?そう聞く前に、少年の方が少女に話しかけた。
「っていうか、このことを聞く時点でアリス決定だよね、カズキ」
「そうだよね、この世界に人なら、非能力者だって知ってる常識だものね、カズキ」
そうなのか・・・。俺の頭脳フル回転は常識と言う一言に一蹴されてしまった。この世界の常識はまだまだ把握できていないようだ。
しかしただではこちらが損だ。もはや開き直ってしまうとしよう。
「ああ、そうだ。俺はアリスだよ。ってかお前ら何なの?お互いカズキカズキって」
「「だってカズキだもん」」
は?
その感情は、かなり分かりやすく表に出ていたようだ。少女の方がくるりと回転して言う。
「あたしの名前は、シガカズキ」
言い終わると、今度は少年が同じように回転して言った。
「僕の名前はシガカズキ」
・・・わからない。いや、もしかして・・・
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷