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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「それにしても、嫌でも主従が決まってるなんて大変だな」
 怒って体力を消耗した俺が、座り込みながら呟く。空は黄緑がかってきていて、もう夕方になるんだとしみじみと思った。今日一日、さんざんだった気がする。と、打海は不思議そうな顔をした。
「嫌ではありませんよ?」
「言い方が悪かったですね」と打海は眉間にしわを寄せて少し考える。そして、解りやすくパッとひらめいた顔をすると、俺の方に向き直った。
「好きで仕えてるんです」
 言ってることがさっきと真逆じゃないか。選べないんじゃねぇの?生まれつき決まってるんじゃねぇの?
 言わんとしていることが伝わったようだ。打海はまた頭を抱えながら唸った。説明は得意な方ではないらしい。
 待っている間、赤の城を見る。俺を逃がしてしまったことはそれほど重大ではないらしい。もう周囲は静まり返っていて、俺たちを探す声すらない。いや、もしかしたら、その会議が相当重大なのかもしれない。下っ端も出なければならないほどに。
 パンッと手を叩く音がして、振り返るとにやりと笑った打海がいた。説明できるネタは見つかったのか?