その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「もしかして、従属関係についてご存知でないとか・・?」
俺が黙りこくってしまったせいだろう。心配そうに雪坂が覗き込んできた。相変わらずどいつもこいつも距離感がおかしいけど、美少女となら悪くもないな。
けれども恥ずかしさに負けて、つい視線をそらしてしまった。
「い、いや・・・その辺の説明は鷲尾・・・じゃなくて、グリフォンから・・・」
「ああ・・・」「グリフォンはねぇ」
・・・?
「え?何かまずいことが?」
「この世界には四人だけ、代々誰にも従属しないで過ごしてきた存在がいるんです。その内の一人が、そのグリフォンなんですよ」
四人全員の名前は知らないが、鷲尾と宝亀がそうだって羊元が言ってたっけ。でも社会的システムなら知っててもいいんじゃないか?
打海が快活な笑顔をこちらに向けてくる。
「例えば、『従属相手に主人側は何も出来ない』みたいなこと、言われてませんか?」
「いや、『罰を与えられる』ってちゃんと聞いた」
何処にも変な要素もないし、聞き間違えたことない。覚え違いもないはず。なんだけれど、雪坂にはため息をつかれ、打海には苦笑いをされた。え、何か違うのか?
自覚できるくらいに挙動不審に動いていると、打海が教えてくれる。
「厳密に言うと、『賞罰』を与えられるんですよ」
打海は俺と自分を交互に指差しながらしてくれた説明を、簡単にまとめるとこうだ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷