その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「はいはーい、んじゃその辺はおいらが説明しましょう!」
俺もそうだが、雪坂も驚いた顔をしていた。こいつの行動に驚くという感覚は共通しているところらしい。
打海は俺の方に乗るトーヴの鼻先をツンと突いて「ヴッ」と怒らせた。一体何が言いたいのかと考えてしまったが、この行為に意味は全くないようだ。そのまま少し離れると、びしっと不躾に雪坂を指差した。
「宰相殿は勘違いされておられるよ?アリスが知らないのはワンダーとか、ミラーとか、そこからだ」
「・・・そこも教えていなかったというの?貴方」
「おいらはこの間会ったばっかりだからねぇ」
眉間にしわを寄せて睨んでいた雪坂が、驚いた顔になった。それから俺を見る。そりゃ俺も不思議だって、そんな会って間もない奴があんな危険なところから救出してくれるなんて。
話を戻そう。
その後、打海が教えてくれたのはこういう話だった。
この世界にある「能力」というものは、大きく二つに分かれる。
一つは「他に力を与える能力」。この言い方は引用だ。俺も意味が解らなかった。まぁ簡単に言うと、他人や物に能力を働かせるものってことだ。多分。例を挙げると、俺や鍵守、羊元、王族なんかも含まれるのだと言う。
で、二つ目は「己に力を与える能力」。これはさすがにバカな俺でも解った。要は自分に働きかける能力だ。この例としては、鷲尾や宝亀、柳崎、川澄がそうらしい。こっちの方が例としても解りやすかったな。
んでもって、一つ目の事をミラー、二つ目の事をワンダーって、この世界では呼んでいるらしい。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷