小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

INDEX|207ページ/343ページ|

次のページ前のページ
 

「道を開けろ!さもないと宰相を殺すぞ!」
 殺す度胸なんてないけどね。気合いでやれば、意外と何とかいけるもののようだ。迫真の演技に圧倒された兵士たちが、慌てだした。一応、雪坂は人質、ないしは脅されているというイメージは付けられたみたいだ。
 俺の魂胆が解ったのか、襟巻になっていたトーヴが毛を逆立てて周囲を威嚇する。更に雪坂まで協力してくれた。
「きゃー。助けてー」
 驚くほどの大根だった。せっかく信じ込んでいた兵士たちがざわざわとまた疑い出す。
 せっかく信じてくれてたのに、なんてことしてくれたんだ!
 そう思って雪坂を見ると、なぜか彼女はどや顔でこちらを見ていた。叱り辛いことこの上ない。そんな情けない様子に、逆にトーヴから「ヴッ」と怒られてしまった。
 打つ手なしかとあきらめたその時、ロビーに個性的な笑い声が響き渡った。この笑い方、どこかで聞いた覚えが・・・

 ドンッ!

 激しい音とともに、俺の後ろに何かが下りてきた。驚いて振り返った俺が相手を認識する前に、兵士の一人が驚愕の声を上げる。
「チェ・・・チェシャ猫!」
 着地したままなのだろう。かがんだ格好でこちらを仰ぎ見ていたのは、昨晩会った打海だった。
 上は二階三階くらいまで道はあるけれどほとんど吹き抜けで、何処から飛び降りてきたのか推測もつかない。けど、「飛び降りた」って時点でもうダメージは大きいだろう。
 しかし流石はチェシャ猫と言ったところか。けろりとした表情で、すくっと立ち上がった。そのまま屈託のない笑顔を向けてくる。