その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
雪坂の発言から一分もたたないうちに、ドアがノックされた。
「雪坂様!入室許可を!」
女性の声だ。男女の分け隔てなく兵士やってるなんて・・・。男が兵士やってることすら非現実的に思える俺には、理解が追いつかないな。
が、どうする?
わたわたと怪しい動きをついしてしまった俺の手が、ぎゅっと握られる。こんな事態に不覚にも、ドキリとしてしまった。俺のときめきも露知らず、ぐいぐいと彼女は引っ張る。
そのままヌイグルミが雑多に置かれた場所に連れて行かれる。なんだここ?
「ここに隠れていてください」
俺を山の中に突っ込むと、扉の方へ歩き出す。今開けられたら丸見えだ。それは非常によろしくない。
俺が慌ててヌイグルミの山に潜り込むのと、雪坂が扉を開けたのは、ほぼ同時だったかと思う。突如、雪坂が可愛い顔に似合った可愛い声で、似合わない怒号を発した。
「何してたの?アリスがこの部屋に来てたのよ!」
「はっ!す、すいません!」
・・・アレ?俺、騙された?まあ確かに?俺みたいなのに美少女が協力してくれるとか夢みたいな展開だったけどさ・・・
悶々とふさぎこむ俺をよそに、女性兵士のリーダー格の人が部屋をのぞきこんで尋ねる。
「ではまだこちらに・・・」
「貴女達が遅いから逃げてしまったのでしょう!」
・・・逃げた?
俺はまだここにいる。やっぱり、契約は破れないものなのか?騙されてるわけじゃないのか?
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷