その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「かはッ・・・!」と、声が漏れる。
幸い、王族にこの能力の情報は言ってなかったようだ。じゃなきゃこんな真正面から、あの運動神経を持っている男が避けられないはずがない。
「呉也!」
朱里が立ちあがるのと同時に、扉が開いて兵士が乗り込んできた。やばい。
ふとカーブしている壁を見る。と、ちょっと出っ張っているところを見つけた。同じ真っ赤だから見えなかったんだ。
慌ててそこに飛び込んだ。内側に鍵が付いている。それを施錠して一息ついた。
「た、助かった・・・」
けれども、合鍵を持っていることは否定できない。一息つけたし、休憩はもう少し後だ。
振り返って先を見ると、階段になっていた。薄暗いが、先があるのは解る。もう行くしかない。俺は階段を下っていった。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷