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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「あーもー!!胸糞悪いわっ!」
 語尾と発声の仕方は丁寧なんだけど、言ってることが下品ですよ?
 入ってきたのは、ところどころに黒色の模様が入っている真っ赤なドレスを着た、宝亀と同じくらいの女性だった。宝亀も美人だったけど、この人は・・・黙っていれば清楚系の超絶美人だろう。絶世の美女とか、そういう単語を使っても差支えないと思う。髪の毛も赤いんだけど、ただの赤と言うよりは、紅色とか、クリムゾンとか、そういうちょっとピンクっぽい感じがある気がする。あれ?紅色の英語がクリムゾンだっけ?
 ともかく、一目でわかったしまった。
 この人が女王だ。
「おかえり、朱里ちゃん」
 朗らかに笑った男の隣りに、彼女はドカリと座る。やっぱり、朱里とは女王の名前だったんだ。
 彼女が隣に座っても全く見劣りしなかった男を見て、彼もまたとてつもないイケメンだったんだと気付く。カッコいい面立ちだとは解ってたけど、そこまでだとは思ってなかった。
 男の名前が解るかと耳を澄ましたが、「ただいま」としか言ってくれなかった。名前呼ばれたんだから、名前付けて返してやれよ。かわいそうじゃないか。
 他人の夫婦仲について、心の中で意見したのがバレたのだろうか?彼女がじろっとこっちを見てきた。美人って、怖い顔をしてるとかなり怖いよな。