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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「で、グリフォンの能力ってどんなのなんだ?」
 俺のその質問が妙にうれしかったようで、ふっふっふと含み笑いを浮かべた。
「ひ・み・つ」
 溜めといてそれかよ!しかも男の俺が男にそう言われても、うれしくない。そっちの気もないし。
 これ以上何も質問が浮かんでこないので、また思いついた時にいろいろ教えてくれるということで一件落着した。ふとそこで思い返す。
「あ、そういえば、あんた、名前は?」
「あ、そっか。知らないんだったな」
 どうやら能力者は名前まで情報が筒抜けらしい。すごい話だ。個人情報保護法とか、やっぱり異世界だとないもんなんだな。
 彼はいつでも説明を書けるようにと持っていた枝を、くるくるとまわしながら自己紹介をした。
「オレは鷲尾(わしお)だ」
「そっか、俺は有須だ」
 思わず俺は自分まで自己紹介をしてしまった。「あ」と思った時にはもう遅く、鷲尾にはケタケタと笑い転げられる。最悪だ。涙を拭きながら、彼はくそ丁寧に続けてくれた。
「聞いたよ」
 恥ずかしくなって、八つ当たりをする。
「で、名前は?なんなんだよ」
 すると、鷲尾の顔色が変わる。険しい顔になり、ぎゅっと真中につまんだように変化した。それから頭をぽりぽり掻いて、大声で叫ぶ。