その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
とはいえ、迷うことはなかった。
目がちかちかしたけど、間違いなく一本道だったからだ。いくつか扉もあったけど、一番奥の大きな扉で間違いないだろう。真っ赤な扉に、黒い字で、模様のようにKINGって書いてあるし。キングぐらい、俺にだって解る。
道は長く、その間に城の中を確認して歩く。
ホント、壁も真っ赤だ。扉は全部黒で縁取りされてるから、あることだけは解る。ノブも黒い。
絨毯も柱も真っ赤だ。金色の縁取りがあるとか、そういう豪華さはない。ただただ赤い。目がおかしくなる。
「ヴ・・・」
トーヴが目をこする。どうやら動物の目にもきついらしい。頭をぐりぐりとなでると、気持ちよさそうに目を細めた。動物は好きじゃないけど、こういう姿は可愛いと思う。
真っ赤な廊下は距離感が狂う。遠い遠いと思っていた扉は、もう目の前にそびえたっていた。
「で・・・でかい」
思っていた以上に扉はでかかった。漫画とかで、主人公の二倍以上ある扉を見るたびに、こんな扉がどこにあるんだと皮肉ってたけど、鍵守の守る扉と言い、この扉と言い、とにかく実在することが解った。漫画家の方々に謝らなくては。
扉の真ん中に亀裂が入っている。そりゃそうだ、扉なんだから。でも、取っ手らしきものは一切見られなかった。これ、この大きさなのに押し戸なの?
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷