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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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 しばらくしてから門が開いた。耳をふさぎたくなるくらい壮大な音を立て、重厚な鉄格子が動く。
 入ってもいいのだろうけど、一人で入る度胸がない。ちらりと助けを求めると、すでに服部と愛川は来た道を戻り始めていた。
「ちょ・・・」
「なぁに?」
 愛川だけが足を止めて振り返る。
「もう帰るのか?」
 俺の質問が情けなすぎたからだろう。彼女は首を傾げていた。
「だって、契約はここまででしょう?」
 そこで思い出した。そうだ。契約内容は確かに、「城まで案内すること」だけだ。ってことはつまり、もう契約終了ってことになる。
 ショックを受けている俺を残して、愛川は姿を消してしまった。
 誰かが迎えに来てくれるようすはない。早く入らないと、門扉だって閉められてしまうだろう。
 もう、腹をくくるしかない。
 泣きそうな顔で決意を決めた時、何かがぴょんと飛びついてきた。
「うわぁ!」
 へっぴり腰の声が出る。飛んできたそれは、襟巻のように俺の首に枝垂れかかった。