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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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 空が徐々に明るさを取り戻してくる。緑の深さが、少し浅くなったように感じる。もう少ししたら、深緑から緑の空へと変わってしまうだろう。寝、寝そびれたんだよな、俺。
「打海、君はどうせ、本気でアリス派に入るつもりだろう?」
「当然っ!いつの時代だって、チェシャ猫はアリスと敵対なんてできないのさ」
 横目で俺を見ながらそう笑った。俺を仲間に入れたいのならそれはそれでいいんだけど、俺がアリスだってばれているのなら、それはいい話なのか悪い話なのか、ちょっと見当がつかない。宝亀、助けてくれ。
 わしわしと頭を掻くと、銀色の髪が月の明かりでキラキラ光る。漫画で銀髪とかよく見るけど、実物も意外と綺麗なもんなんだなと、感心してしまう。これが美少女なら、もっと良かったんだけど。
「とにかく、それが女王に伝わる前に啓介を連れて行かないとな」
「え?なんで?」
 まだ服部にはバレてないはずなんだけど。
 けど事態はそんな問題じゃないらしい。
「女王に伝わったら、機嫌を損ねてトランプ志願の非能なんて、すぐ斬首台行きさ」
「え!なんでだよ?」
「憂さ晴らしですよ」
「そう。女王はそういう性格さ」
 なかなかバイオレンスな趣味をお持ちで。国民を何だと思ってる王族なわけさ、それ。