その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「深夜の戦闘は禁止のはずでしょ?」
確かに。紅白でその協定をしたとか、鷲尾が言ってたな。女王の美容のためだっけか?
「それは赤と白の協定だ」
どういう意味だ?
打海の手を払い、ステッキをまた彼に向けた。
「君は何処の所属だっけ?」
本気の質問っぽくない聞き方だ。刑事ドラマで、相手が犯人だって解ってるときの尋問みたいな・・・。
「さあ?無所属には難しい質問だね。アリス派とでも言っておこうか?」
にゃははと笑いながら、銃口を前にして軽口をたたく。アリス派とか、無駄に巻き込まないでくれ。
無邪気な打海の笑顔に対し、凶悪な頬笑みを服部が返す。
「無所属に、赤と白のルールは適用しないね?」
こ、殺されるぞ!早く逃げろ!
打海を助けたいという気持ちよりは、目の前で人殺し現場を見たくないという理由なわけだが。
けども、彼は逃げるどころか笑顔のままだ。変わったことと言えば、無邪気だった笑顔に邪気が籠ったくらいだろうか?
「それはどうかな?」
服部から笑顔が消える。当然だ。俺ももう泣きそうだよ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷