その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「なぜ、君がそんなことを気にする?」
・・・墓穴を掘るって、こういうことか?
いや、学習している場合じゃない。何とかして誤魔化さなきゃならないんだって。えーっと、えーっと・・・
「や、た、ただの興味さ」
感染った。こいつの言葉遣いとか、考えが、まるまんま感染った回答じゃないか!バレるぞ、バレるぞ流石に!
心臓がバクバクいってるのが解る。ってか聞こえてくる。血管に異常に血が巡ってるんだな、きっと。
胡乱気に俺の事を観察してきたが、ふうと息をつくと、くるりと方向転換をして肩をすくめた。
「や、解らんね。やっぱり、非能力者の考えは解らない」
た、助かった。思わず左胸を押さえると、オマケで勢いよく口から空気が抜けた。
「で、情報を持っているのかい、いないのかい?」
助かってないじゃん!そうだよ、どうしようどうしよう。
頭の中でフルスピードのシュミレーションを行う。
もし俺がアリスだと名乗った場合。
きっとすぐに城に連行されて、檻の中に突っ込まれるんだろうな。それは避けたい。
もし俺がアリスだと言うことを隠しつつ、情報を提供した場合。
・・・無理だ。俺にそんな器用なことは出来ない。そんなに賢い真似も出来ない。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷