その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「失礼、話題が逸れてしまったね」
逸れたままでいい!逸れたままでいいって!
早く夜が明けないかと空を見るが、今晩は妙に長い。ちっとも寝れないまま夜を越すのは、そう簡単なことじゃないらしい。完徹とかしたことないから知らなかったけど。
「で、何か知ってるかい?」
何とかして説明に戻そうと、こぼれた言葉は「もし」だった。「もし」何?何も考えてないよ?何とかして絞り出す。
「もし、アリスが、協力を拒んだらどうするんだ?」
「拒む?ああ、確かにその可能性はあるね」
少しいぶかしげな表情をしているところが気になったけど、納得はしてくれた。が、すこしも考えずに、怖いくらいの無表情でこちらを見てきた。
「まぁ、協力するように仕向けるだろうな」
「し、仕向ける?」
「軟禁・監禁は、どちらの王も十八番だ。アリスの精神力がどんなものか知らないけど、『何をしてでも』力を使わせると思うね」
い、言わなくてよかった・・・。
ほっとしたのもつかの間。今まで修正能力と思いこんできたが、服部は頭の回転が速いほうのようだ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷