その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「わかった」
「この僕と二回も契約するなんて、君も対外『気狂い(きちがい)』だね」
失礼な。あんたらの方が、ずっと気狂いじゃないか。でもこいつの失礼さは、今に始まったことじゃないな。
でも。
「俺なんかが持ってる情報なんて、高が知れてんじゃないの?」
この世界では能力者と非能力者の差は激しい。こいつらだって、兵に志願するまで酷い扱いをしてきた。そんな相手に情報提供を求めなければならないようなことは何だ?
警戒しているのが伝わったみたいだ。愛川に気を遣ったように控えめに笑った。
「案ずることはない。非能に情報提供を求めたやつは他にいないから、気になっただけさ」
なんだかんだいって、非能力者への関心が高いよな、こいつって。
気になっただけという言葉で、少し安心した。変な情報じゃなさそうだ。
「で?なんの情報がほしいんだ?」
「驚かないでくれよ?」と念押しをしてから、服部が立てていた右足を、左足と同じように伸ばした。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷