その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「契約を持ちかけられないで、どうやってあんたらはこの世界で生きてるんだ?」
今まで俺がこの世界で学んだことはこうだ。
契約無しでは何もできない。
それこそ誰かを祝うことも、誰かを助けることも出来ないのだ。正直、服部、愛川、夢野の三人が互いに契約していると考えていたわけだけど、今の感じから違うようだ。
俺の事をじっと見ていた愛川が、眠っている服部の事も気にせずひゃははと下品に笑いだした。アイドル系の可愛い顔が台無しだ。
「・・・なんか間違ったこと聞いた?」
「だって、契約しないと何もできないみたいな、その言い方・・・っ」
・・・え?
「ま、待てよ!契約しないと何もできないんだろ?」
「ひゃははっ!本気?それ本気なの?」
違う?だって鷲尾も宝亀も、そんなようなことを・・・
「あー・・・笑った!」
「『笑った』じゃなくて!どういうことだよ?」
どこで間違えた?何が違った?
思っていたよりおろおろしていたらしい。本当に解らないと思われていなかったようで、愛川はただでさえ大きな目をさらに見開いた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷