その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「愛川」
服部や夢野と一緒にいるのだから、愛川が起きている保証はない。反応がないならいいやという程度だったが、きちんと返事がきた。起きていてくれたらしい。寝られたら困るので、すぐに続ける。
「なんで俺、契約達成できたの?」
当然の質問だと思ったんだけど、彼女にとっては不思議な話だったらしい。上半身を持ち上げた、その大きな眼に捕まる。
「なんでそれが不思議なの?」
逆に聞かれた。いや、だって不思議だろ。俺何もしてないんだよ?
それをそのまま伝えると、愛川は静かに笑った。こんな笑い方もできるんだ、こいつ。
「だって、あたしたちと契約する人なんて、会ったことないんだもん」
「え?従属・・・だっけ?してるんじゃないの?」
「従属と契約は違うよ。対等に何か持ちかけようっていう人がいなかったってこと」
ん?
「だから契約しないかって持ちかけてきた時点で、もう非能力者だからとかっていうレベルの話じゃないんだよね」
それは物珍しさのレベルなんだろうけど・・・、じゃなくてっ!
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷