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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「ほんっとうに君は面白いな!能力者と非能力者が公平だったことなんてあったかい?」
 詳しくは知らないけど、少なくとも名前からして能力の有無が違うから、公平ではないだろう。羊元の店の戦闘の時も、だいぶ違ったもんな。能力者の俺と非能力者の一般兵は、能力を抜いた「力」でも圧倒的な違いがあった。
 言い返せない。悔しいけど、確かに公平ではなかったかも。
「だろう?だから僕らも、他の人と変わらぬよう、僕ら自身が他と公平であるために、能力者と非能力者に不公平さを生んでいるのさ」
 自慢げに話すその指先で、くるくるとティーポットを回転させていた。凄さを通り過ぎて、もうイラッとしかしない。
 でも解った。俺はこいつらの言う公平が、一生理解できない。それを証明するように、愛川がティーポットのようにくるくると回って追い打ちをかける。
「皆にとって不公平であることが普通なのに、あたしたちだけ公平にするのは、それこそ公平じゃないでしょう?」
 もう解りません。そんな思想家みたいな考え、俺には理解が及びませんって。
「要は、『普通=公平』ってことか?」
 言った瞬間、アヒャヒャと腹を抱えて転げまわられた。笑い方から、誰がかを言う必要はないよな、もう。もう一人も机に突っ伏してバンバンと机をたたく。あーもう!こいつら人を不快にする天才だよ!そういう能力持ちなのかな?!