その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「で、一般人。僕らに何か用かな?」
音を立てて元の椅子に座り直した。何か偉そうな気がする。
あると言えばあるんだけど、通りすがりって言っちゃったし、ちょっと言いにくい。でも、正直城には連れて行ってほしい。出来る限り大事になる前に帰りたいというのが本心だ。
はっきりしないことにいらいらしたのか、初め以来目を合わせることがなかったのに、淡々と、眺めるように向けられた。
「夢野とわざわざ契約をして留まったんだろう?僕らに用があると考えるのは当然だ」
頭の回転が悪くて申し訳ないなっ!
そうだよ、決めたじゃないか。ここは素直に言っておこうって!
「城の場所を教えてくれ」
ガタッ
音を立てて服部が立ち上がった。なんか変な事言ったか?助けを求める意味で愛川を見ると、彼女もさっきまで遊んでいた夢野の手を落としていた。おかげで起こしてしまったようだ。不機嫌な顔で、夢野が俺を睨んでくる。俺のせいじゃない、俺のせいじゃない・・・!
つかつかと勢いよく俺の方に向かって歩いてきたかと思いきや、いきなり肩を掴まれた。表情は何とも嬉しそうだ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷