その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「俺みたいなのに出来ることが、お前にはできないって言うのかよ」
ピクッと眉が動いた。が、またお茶を飲み始める。本気で話す気がないらしい。
イラッとしていると、隣からけたたましい笑い声が聞こえてきた。アヒャヒャって感じの、ちょっと変わった笑い声だ。
見てみると、さっきの少女がいつの間にか座り込んでいた。テーブルを足にかけて、椅子を斜めに傾けている。・・・ってか、スカートの女の子がやっちゃいけない格好だろ!中見えんぞ、中!
のけぞった姿勢のまま、目元を拭った。涙が出るほど笑いやがったのか・・・
「無理だよ、服部は誰に対しても公平だからね」
何がどう公平なんだ?
こいつら何度も「公平」って謳ってるけど、こいつらの言う「公平」って何だ?元の世界の公平の意味も確かにわかっちゃいないんだけど、こいつらのは拍車をかけて解らない。日本語があってるか解らないけど、それが解らなくなるくらい解んねぇぞ!
一応男の名前が服部という名前なのだと解った。ってことは・・・、この女の子の名前は・・・何だっけ?ユメノが何だか言ってたよな、服部となんとかって。よりによって服部の方しか覚えてねぇよ。
「ってか、あんたは良いのか?」
「別に?あたしはあんたがユメノと契約した時点で、他の非能とは不公平になったんだもの」
・・・どうやら不公平になれば、扱い方がましになるらしい。そんなの、ビバ不公平じゃねぇか。
その言葉を聞いて、服部が音を立ててカップを置いた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷