その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
しかしそれから、二人の態度は一変した。いきなり近くの椅子にふんぞり返り、御馳走を食べ始める。只食べるだけでなく、俺とのくだりが一切なかったかのようにふるまっているのも気に食わない。なんなんだよ、こいつ。
なんかこう・・・、口下手で申し訳ないけど、嫌味な感じだ。
っていうか、こいつら、自分の名前も名乗ってないんじゃないか?
「なあ」
無視。
「なあってば」
無視。
うっわ、感じ悪っ!でも、ここでくじけたら負けだ。普段なら負けてもいいけど、今はなんだか負けたくない。
思いっきり男の肩を掴みながら、大声で呼びかける。
「おい!」
「なんだね、うるさいな」
すこぶる不機嫌な顔を向けられた。失礼にもほどがあるだろう。こっちの方がずっと気分が悪いのに。
「名前聞いといて、自分は名乗らないのか?」
「お前に名乗る価値なんてないだろう」
他人に価値を求めるタイプか。嫌な系統だな。
でもそれを逆手に取ってみる。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷