その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「誕生日じゃないってすばらしいっ!」
「誕生日じゃないって素敵!」
歌っている姿はとても楽しそうだが、囲まれてる方は頭がおかしくなりそうだ。洗脳か?これが洗脳なのか?
いや、それどころじゃない。とにかく聞かなきゃ。
「た、楽しんでるところ悪いんだけど!」
「客人、名は何だい?」
聞いてねぇ・・・。
少しイラッときたけど、まあここは従っておこう。変なところで殺されたら嫌だし。
とはいえ、名前を名乗るわけにはいかない。個人的には違うけど、本名も「ありす」なんだよな。この世界ではアリスという名前には意味があるようだし。でも、物語なんて一度も作ったことなんてないし・・・
思いつきは苦手だ。想像力もない。だから。
「・・・啓介だ」
嘘はついてない。こいつが聞いてきたのは名前で、名字じゃない。そう思い込むことにした。ユメノも名前だし。
「・・・啓介、か。知らん名だ。非能力者か」
顔の情報がいっているのではなかったか?くわしい内容は覚えてないけど、鷲尾はそんな風に言っていた気がするんだけど。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷