その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「・・・なんでここに来たの?」
そうですね、そうですよね!その辺やっぱり突けちゃいますよね!
「あ・・・、えと・・・、いい匂いがしてきたから・・・」
わぁ・・・っ、俺って素直ぉ!ああ、もう終わりだ。ばれるよ、ばれちゃうよ!俺って死んじゃうの?
顔が真っ青になる感覚がした。こんなの自覚できるなんて思ってなかったけど。でもその子は眠たそうな顔でこちらを見てくるだけだった。
「お腹が空いてるの?」
「は、はい・・・」
拍子抜けしすぎて、疑いもせず肯定してしまった。特になんてこともなく、「ふぅん」とだけ言って、また眠る体制になった。いや、ここで寝られたら困る!城だ。城の場所を教えてもらわないと!
「ちょっと聞・・・」
「聞」まで言えた自信はない。何せ、顔も上げずにこちらを睨みつけてきたのだから。とんでもなく怖かった。小学生くらいの女の子に高校生にもなる男子が押し負けるってダメな気もするけど、慣れてないんだよ!
大きなため息をつかれた後、顔をあげてくれた。
「契約しようか」
こんな子供までそんな堅苦しい話をするのか。いや、日本で言う「ゆびきりげんまん」程度の乗りなのかもしれないけど、それで有罪になっちゃうんだぞ?
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷