その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
それは、「仕えている人が客で、その人が『家』を持っている場合」だ。
しかし考えておいて何だが、その可能性は実に低い。と、俺は考えてる。
宝亀と契約しているから俺が殺されるかもしれない。宝亀だけでなく、鷲尾も羊元も頷いていた。言い換えるなら、一人にしか仕えることができず、それは誰もが知っている常識的なレベルの話だってことだ。ちょっとカッコよく「原則的に」とか言う方が、当たっているのかもしれない。
さらに、主従関係には「契約」と「提供」があるって言ってた。うろ覚えだけど、それしか言っていなかったと思う。ってことは、主から従者への・・・「報酬」っていうのがあっているんだろうか?それはないらしい。だから、お偉いさんが従者に場所を借りて褒美の席を賜る、なんてことも無いってことだ。
あと考えられるのは、一人が多数と契約する可能性だ。でもこの場合、俺がいたからといって殺される心配もないし、平気だろう。
・・・なんか、今の俺、頭冴えててカッコよくないか?インテリっぽくないか!
・・・気のせいか。そうか。
なにはともあれ、ここで人を待ってみるのも方法かもしれない。腹が減っているのに目の前に御馳走があるというのが目の毒だが、仕方ない。なんか条件付けて食わしてもらおうかな。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷