その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「しかしだな」と心配されたが、俺もそこまで馬鹿じゃない。この建物が少ない世界で、赤い屋根はもう一つくらいあった気がするけど、白い屋根はまだ聞いた覚えがない。・・・と思うけど。
「白い屋根って、他にあんの?」
「ないない。建物に白色を使えるのは、白の王族だけと今代の王が定めたし」
・・・あれ?白の王も身勝手じゃね?気のせい?
行く準備もできた。卵は袋に入れて、その紐をベルトに通す。意外と落ちそうにない。飛び跳ねても足踏みしても大丈夫そうだ。よし。
「じゃ、俺行くわ」
「あ、待て待て」
振りかえりざまに、眼鏡の隙間に何かをさしこまれた。
「危ないだろ!」と注意してからそれを見ると、俺にとってはもう恐怖の代物となった物、鷲尾の羽根だった。二度と使いたくないなぁ・・・。また俺ボロボロになるの?
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷