その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
ひねくれ者たちのパーティー会場
黄色い空も水色の森も、だいぶ見慣れてきた。一人でも躓かなくなってきたし、宝亀が目印も教えてくれたから迷うこともない。
・・・なら良かったんだけど。俺って実は方向音痴なんだよね。いや、いまさら実はもないか。何回迷ってんだかって感じだもんな。
「白い屋根・・・、白い屋根・・・」
呟きながら探すのは、年齢がもっと上になってからだと思っていた。それともその「上」に、もう入ったのだろうか?
学校の鞄は、一般を漏れず肩掛けできるような手提げ鞄だ。今は両方の持ち手に腕を通し、リュックサックのように背負っている。下校中にこういうことやっている人を見たとき、何変なことやってんだよと思ってた。だって普通に考えれば、学生鞄じゃないそういう鞄を背負う人は見ないだろ?だからそのイメージが大きかったんだけど、少し反省したよ。両手が空くというのは非常に便利だ。走る時によたよたしないし、曲がるときにサッと木に手がつける。重たさも軽減した気がする。偏見はもたずに、何事もやってみるもんだ。思わぬところで学んだよ。
それにしても。
「あー・・・、腹減った・・・」
ぐ〜っと、腹が盛大に音を立てて鳴いた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷