その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「なあ、そんなにあいつってやばい奴なのか?」
「やばいとか、そういう話ですらないなぁ」
のんびりとした歩調にあった、悠長な口調で鷲尾が困惑する。金色の瞳が、切れ長の目の中をぐるぐると回っていた。何と解りやすいことか。
宝亀も答えに詰まっており、しかし答えてくれた。
「現段階で、最強の男だろうな」
かっこよすぎるだろ、そのフレーズ。誰もが憧れるワンフレーズじゃないか。
けれども、ざっくりとしすぎている気がする。
「つまり?」と、ダメもとで催促すると、閃いたらしい鷲尾が
「つまり、能力で右に出る者はいないってこと!」と、これまた解決しない返答をくれた。だから何なんだよ。
鷲尾と宝亀の回答がつぎはぎだったので、解り易く解説しようか。久々に。
まずはじめに。
白の騎士はその名の通り白の王に仕えている男なのだそうだ。これがまた凄い忠誠心なんだそうで、能力名を「白の騎士」と改めたくらいらしい。ちなみにもともとは「ナイト」だったとか。だから白の王の命令であれば、感情を一切忘れて行動できる。任務執行のためなら、命だろうと掛けるらしい。すごいと感心するよりも、怖いとビビるレベルだけどな。
次に。
能力を使わなくとも、異常なほどの身体能力を持っているらしい。まあ、運動神経抜群ってところ?さすがにオリンピック選手レベルまではいかないらしいけど、プロと言われる人々と同等レベルの実力がある、といっていいみたいだ。
極めつけは。
当然ながらその能力だ。ま、一体どんなものかと言えば、とてもざっくりしたものなわけだが、身体能力を向上させることができるそうだ。でもその身体能力の領域が半端ない。まさかの五感まで研ぎ澄ますことができるらしい。ただ、治癒力とか記憶力みたいなものは無理らしいけど。たしかに最強と言われるだろうな、それは。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷