その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「能力ってのは、フカなんだよ」
・・・フカ?頭の中で変換が効かない。もうヒヨコしか出て来ない。・・・「孵化」ってことです。
「付加価値の『付加』だ。付け加えるの意味だな」
宝亀が淡々と教えてくれた。そんなに無知さが顔に出ていただろうか?だったら情けない。しかもまだ意味が解らないのだから、もう穴があったら入りたい。いや、穴に入ってここに来たんだったか。
つたない理解力で、頑張って説明しよう。
「能力」とは、持って生まれた才能に追加されるものだそうだ。才能っていうのは言葉のあやで、まあ、生来の実力ってところか?とにかく能力とは違うものだという。
で、この事態の問題とはなんなのか?というのが、これに繋がる。
今までの柳崎は、中学生くらいの少女だった。軍人だからかなり鍛えてはいただろうが、「中学生女子」以上の腕力も脚力も決して出ない。つまり、あの年代の女の子の力+αってことだ。
対して今。柳崎はドラゴンになった。龍っていうのか?誰もがイメージする通り、その力はすさまじい。大人のクジラを五匹位でジャグリングできるくらいだと、宝亀が言っていた。・・・ちょっと解りにくい例なんだけどな、これ。でもその怪力っぷりはもう解る。そして、その力+αになるというのだ。もうロケットでジャグリング出来るんじゃねぇの?いや、クジラとロケットのどちらが実際重いかなんて、普通に知りませんけど。
「・・・やばくね?それ」
「だからまずいと言ってるんだろうが」
羊元さん、もうすこし優しくお願いしますよ・・・
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷