その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「で、化け物になると、何か都合の悪いことがあるのか?」
何か馬鹿な事を聞いてしまったらしい。鷲尾は笑いだし、宝亀は眉間にしわを寄せ、羊元にはさげすまされた。酷くないか、みんな。
轟くような咆哮をし、柳崎が暴れだす。
?
ふと不思議に思った。状況から考えれば俺にも解る。暴れる必要はないんだ。俺達だけをピンポイントで狙えばいい。
なのに今、目の前で柳崎は暴れている。攻撃を誰に当てるでもなく、木々をなぎ倒している。大きい体で動くからとか、そういう域じゃない。
三人の落ち着きぶりも異様だ。こんな化け物が暴れていて、あれだけ青ざめていたわりに、全然焦ってない。笑ってるやつまでいるんだぞ?
鷲尾が腹を押さえて隣に来た。さっき蹴られたのに、笑ったりしたから結構痛いようだ。人の事言えないけど、お前バカだろ。
「柳崎の能力は覚えてるか?」
それくらい覚えてる。
「怪力だろ?」
胸を張って答えた。バカさが強調されて、後から「何やってんだろ」と鬱になる。
回答を肯定し、話が続けられる。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷