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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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 勢いよく風が吹いた。突風ってやつだ。オールの先にある、あの、なんていうのか解らないけど、とにかくあの四角い部分が、団扇みたいに働いたんだと思う。
 さらに奇跡が起きた。狙ってなかったのに、というか、狙いを外したのに、柳崎に当たった。たまたま偶然、風の向かった先に柳崎が飛び込んできたからだ。詳しく言うと、羊元の攻撃をよけた柳崎が行った先に、オールの生み出した風が向かって行った、ということ。説明べたで申し訳ない。
 突風に吹き飛ばされ、彼女は奥の森の木にぶつかる。チョークみたいな木は、それだけでいとも簡単に砕けて倒れた。白い粉が舞う。見てるだけでくしゃみが出そうになった。小学生の時に黒板消しを叩いて起こるあの現象を思い出す。
「なるほど」
 茫然としている隣で、宝亀が納得の声を上げる。納得してる場合?俺なんか、酷いことしちゃった気がしてならないんだけど!罪悪感半端ないんだけど!
 黙り込んでいることで、説明を求めていると判断されたらしい。
「漕いだんだよ、貴様は空気を」
 空気を漕いだ。なるほど。つまり今の風は、水で言う波なわけだな。でもそうじゃなくて・・・
「すっげぇじゃねぇか、アリス!」
 汲み取ろうともしない鷲尾にいらっとする。こいつ、ちょいちょい思ってたけど、自分勝手じゃね?俺の世界観とのギャップも考慮してよ!
 羊元も歩いてきて、オールをまじまじと眺めた。
「何が生まれてくるんだろうと思っていたけど、まさかオールになるとはねぇ・・・」
「もうすこし条件を釣り上げればよかった」と、ぼそっと呟く。いや、今の条件でぎりぎりなのに、これ以上あげられたら、自分の武器貰えなくなんじゃん!
 無責任かもしれないけど、罪悪感は少し無くなった。みんなでワイワイやるほうが、こういうときは意外といいのかもしれないな。