その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
彼らの第二回戦は、鷲尾と羊元の連合軍(?)対柳崎一人という対戦となった。さっきまでと優劣が逆転した状況だ。しかし、さすが現役軍人。二人がかりでも柳崎一人に苦戦している。
俺も手助けできればと思う反面、これ以上一人を袋叩きする、という構図はあまり気分が良ろしくない。弱い者いじめじゃないのは確かなのに、どう考えたって気が引けてしまう。
「オールは何に使うものだ?」
いきなり聞いてきたのでびっくりする。っていうか、宝亀が解らないものを、俺に解るわけがない。それ以前に、「何に使うものか」という質問がバカな俺には解らない。どうやって使うものなのかってこと?その考えでいいの?
言わんとしたことが解ったのか、もう一度解りやすく聞いてくる。
「一般的に、だ。まあ、貴様の世界と我々の世界で一致するかどうかは不明だが」
なるほど。一般的でいいんだな。
「なら、舟を漕ぐために使うな」
「やはりそうか」
どうやら一緒だったらしい。この会話に意味があるのかないのか・・・。頭のいい人の考えることは解んねぇなぁ・・・
もしかして。
「宝亀さん?知らないとかないっすよね?」
「使い方しか知らないな」
能力は解らない、と。でも使い方なら俺もちょっと想像がつく。頭に浮かぶのは、あのメイド服に鍵守の姿。見れば目の前の柳崎や羊元もそうだ。
きっと、鈍器だと思う。
ちらりとこちらを見たかと思うと、宝亀にため息をつかれた。え?違うの?
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷