その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「オールになった・・・」
そうだ、オールだ。鷲尾のつぶやきのおかげで思い出す。いや、覚えていると思ってただけで、知らなかったかもしれない。デジャヴ的な・・・ね?
「『亀まがい』の知識によると、有須の武器は変化するそうだ。卵の時は能力を無効化、オールのときは・・・」
「無視するな!」
頭上にあの巨大な本を掲げた柳崎が飛んできた。あの本持ってジャンプできるとか、怪力の域出てるって!あのメイド服と言い、アクティブすぎだろ、この世界の女子!
宝亀が言いかけた話によれば、オールのときには別の能力があるらしい。つまり言い換えれば、「ジャバウォッグ」の力を無効化できないってことだ。
さらに簡潔に言うなら一言。
ものすごくやばい。
自分の語彙力のなさや、表現ベタな点は反省するけど、ほんとそれどころじゃない。
宝亀をその場に座らせた鷲尾が、首輪につけていた鎖を掴んだ。その鎖をぐっと引っ張ると、首輪からジャラジャラっとさらに鎖が出てくる。首輪のどこに収納されていたんだよ、その量!
もどもどしていると、鷲尾が走り出した。首輪に繋がったままの鎖を投げると、鎖が本に巻きつく。念力でも持ってるのか?
「そんなもので止まるものかっ!」
そういう柳崎の足は止まらない。しかし。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷