その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「なんだ?この光・・・」
無責任に驚く鷲尾に、光の付いた手をぶんぶんと振る。これで剥がれてくんねぇかなぁ・・・
「わっかんねぇよ!なんかオレンジで熱そうだしさぁ」
「いや、光がオレンジなのは当たり前だろ」
面倒だな、もう。光の色まで違うのかよ!
それにしても、この光は手を伸ばせば伸ばすほどのびる。どこまで行くんだ?
ドンッ
勢いよく、何かが鷲尾にぶつかってきた。彼が倒れることはなかったが、すこしよろめく。ここで倒れないところが少し悔しい。いや、仲間なんだけどさ。
ぶつかったのは、宝亀だった。大した傷はないようだが、柳崎の本にやられたらしい。うめき声をあげて、顔を痛みで歪ませている。やはり、無効化なしでは彼女の怪力にかなわない。
宝亀は鷲尾に礼を言うと、すぐ体制を戻す。そしてこちらを見た。柳崎に向けていた攻撃的な目が戻っておらず、いらん恐怖を覚える。何もしてないです、はい、ごめんなさい。
「有須、目一杯手を伸ばしてみろ」
「もう伸ばしてるんだけど・・・」
「光が体についても問題ない。だから目一杯伸ばせ」
確かに体に付かない程度しか開いてない。俺は言われるままに思いっきり伸ばそうとすると、その前にポンと光が切れた。しかも形が変わり、ぽとっと物体となって落ちる。
あー・・・、なんていうんだっけか、これ。あれだよ、あれ。船漕ぐやつ。モーターとか、スクリューじゃなくて、もっと古典的な・・・
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷