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空野 いろは
空野 いろは
novelistID. 36877
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安全な戦争

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 目を覚ますとそこは、俺の見慣れた基地でも日本でもなく、アンナの部屋だった。俺が起き上が
ると、彼女は朝食を作って待っていてくれた。
「おはよう」
「おはよう」
 俺が席に着くと、アンナは「いただきます」と以外にも流暢な日本語でそうつぶやいた。
「練習したんだ」
 嬉々として語る彼女と一緒に、俺も食べ始める。
「そういえば、救助来ないね」
 アンナの口からそんな言葉が出るとは思わなかったが、俺もそのことは気になっている。
 遭難してもう四日か? 俺の体内のICチップは損傷を受けていないはずだから、いる場所なん
てすぐに特定できると思うんだが……。
「なんでだろうな。でもさ……」
 アンナはスプーンを置いてこちらのことを見た。
「この村にもう少しいても、いいと思う」
「そうなんだ。あたしもそういってくれると、嬉しいな」
 食事が食べ終わり、外に出ると、村人たちが忙しく片づけをしていた。俺はすれ違ったサムエル
やエリックに挨拶をしながら、一途に村長のもとへと向かった。
「やぁ、おはよう。昨日はよく眠れたかね」
「ええ、おかげさまで。ぐっすりと」
「そうかそうか。いいことだ」
「俺も手伝いますよ」
「うん? お前さんはもともと、客人じゃったんだろう? 片付けまで手伝わされてもらったら、
今度こそ立つ瀬がないわい」
「いいんですよ。俺も楽しませてもらいましたし、助けてもらったお礼もあります。これくらいは
手伝わせてもらいますよ」
 俺はそういうと、祭壇の撤去作業に加わった。分解作業はかなり手間がかかるらしく、指揮をし
ている村長の掛け声に合わせながら、一つずつ丁寧に崩していく。
 祭壇の片づけは十二時ぴったりに終わった。俺はアンナの昼食を食べるべく、家へと向かった。
もうここは、俺にとっての第二の故郷になっているらしい。どの家から誰が出てくるのか、わかる
ようになってしまった。
「腹減った〜」
 と言いながら玄関をくぐったが、そこにアンナはおろか、料理をした形跡もない。もしや片付け
が思うようにはかどらないのか?
 俺はどこにいるのだろうかと村中を歩き回ったが、どこにもいない。
「井戸かな」
 俺が起き上がった初日に手伝わされ、訓練代わりに利用した場所へと向かう。井戸の近くには「V」
のマークを描いたため、一番思い出深い場所かもしれない。
 井戸は村の外れにあり、それなりに歩くので、毎日毎日水で満たした瓶を持って歩けば、女性も
それなりの筋肉が付くため、村人のほとんどはスタイルがいい。先進国の軍隊内では、腹の出た軍
人も多くはないので、彼らを少しは見習ったらどうだろうか。
「あ、あれかな」
 井戸の傍に人影が見えた。そこには三人ほどおり、何かを話しているようだった。
「おーい!」
 だがそこには、アンナがいなかった。いや、正確にはいるのだが、彼女はほかの男たちと親しげ
に話しており、談笑しているようだった。

作品名:安全な戦争 作家名:空野 いろは