安全な戦争
ら家へと向かっていく。
まだ消されていない火が彼女の影を伸ばしている。俺は座っているため、何もかもが小さく大地
に映っている。
「いい? マモル。あなたにとって大事なことはなんなの? 未来を語ることだけが、あなたにで
きることなの? 今を生きず、未来のような漠然としたものに生きているの?」
俺が生きている場所。俺という人間が何をしているのか、どうしているのか。それが理解できる
世界はどこにあるのか。
「こんなことを言うと、あたしがさっき言ったことに矛盾するけど、言っておくわ。そんなの下ら
ないわ。こっちから願い下げよ」
アンナは家のある方向に歩いていく。俺は自動補正された暗闇を見て彼女の後ろ姿を見つめてい
たが、やがて、眼球にある小さな液晶レンズを外した。
もうそこには彼女の姿は見えない。ただ漠然とした闇だけが広がっていて、俺は村の中央にある
大きな焚火のそばで、今夜は眠ることを決めた。