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空野 いろは
空野 いろは
novelistID. 36877
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安全な戦争

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 祭りの準備は村にいる男が総出で行っている。
 俺もその男たちの中に入っていき、儀式に使う名称がわからない様々なものを村の中央広場に運
んだ。
 村の男たちはみな剛腕の持ち主で、日々の生活の中で鍛えぬかれているらしい。
「いや、はっはっはっ! でも女には敵わねぇや!!」
 昨日、家畜小屋を掃除する前に会ったサムエルがそう言った。どうやら日本でもここでも女性の
強さは変わらないらしい。アンナを見ていてもそう思う。
 祭りの準備は着々と進んでいった。今夜は前夜祭が行われるそうで、本格的な準備は夜通し行う
ようだ。男たちは村人全員で作ったという装飾品の品々を倉庫として使っている小屋から運び出し
ていき、本番の催しに使うものは広場の隅に置かれていく。
「メインイベントはもちろん儀式なんだけど、ぼくとしては催し物のほうが好きだね」
 エリックもまったく苦労していないといった顔で準備を進めていく。彼は顔に似合わずなんでも
持ち運ぶので、体つきからでも剛腕だとわかるサムエルとは違って、意外な一面だった。
「これ、ここに置いていいのか」
「うん。それは明日使うものだからね」
「何に使うんだ?」
 俺が地面に置いたのは、小さなプラスチック製の土管だ。ここのインフラを整備した時に余剰し
た分をもらい、ここで祭りの催し物の道具として使われているらしい。
「それは明日のお楽しみ。君も参加するといいよ」
 何やら訳ありの笑みをたたえて、「さ、まだまだ仕事はあるんだよ」と作業を続けていった。

作品名:安全な戦争 作家名:空野 いろは