安全な戦争
アンナの話は、日本人としても納得のいく話だ。中国などの大陸国では、資源が貴重な島国と違
って、食文化そのものが違う。食べ物を残すことが礼儀とされ、音を立てて食べないのがマナーだ。
その点、日本はどの国から見ても異常な食文化かもしれない。麺類は音を立てて食べ、お皿は利き
手ではないほうで持って食べる。どの国のマナーも似たり寄ったりだが、日本は特異で、ほかの国
の軍人と食べる時も、堅実で知られるドイツ人と食べた時には怪訝な顔をされたりもした。
「さ、食べたら片付けないと。もう遅いから寝ないとね。明日からまた準備があるしね」
外はもう真っ暗だ。家畜小屋掃除を始めたのが夕方だったから、今はもう二十時くらいか? そ
れでも常時いつでも明かりがつく日本式の暮らしに慣れた身としては、少し早すぎる就寝だ。
「どこで寝ればいい?」
「ああ、そこで寝ていいわよ。私はもう一つストックを持ってるから」
そういって、アンナは予備の布団一式をどこからか持ってきて敷くと、ろうそくの明かりを吹き
消した。
辺りは真っ暗だったが、空いただけの窓からは星々が見えた。