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察人姫-第弐話-

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 調査四日目。
 それは日付が替わると同時に始まった。
 場所はソラとユーイチの二人も住むマンション“LINK”
 四つの棟がある五階建てで、それぞれマンションの名前のアルファベット一文字ずつで棟の名前が表される。
 L棟202号室。
 たった今ソラが呼鈴を鳴らした部屋で、二人が住む部屋の隣にあたる。
「鍵がかかってない時は勝手に入れって言わなかったか?」
「いや、やっぱり気が引けるんで……」
「そうだよ。もしキュウちゃんが女の子連れ込んでたらアブナイじゃん」
 ソラが三度呼鈴を鳴らしたところで鍵のかかっていないドアを開けたのは澤村球道。名前の印象とは逆に超が付くほどインドア派(引きこもりとも言う)な彼だが、その分コンピュータにおける知識、技術は凄まじく、今回の事件において真っ先に協力を仰ぎたいと二人が考えた人物である。歳は今年で三十になる。
「女?あり得ないだろ。俺だぞ?」
「そんなの分かんないよ?キュウちゃん顔はいいんだから」
「それ悪口になってるって気づいてるか?チビ」
 ソラの頭を小突いて二人を中へ招く球道の容姿は好みの違いが出そうではあるが、いわよる今風イケメンであり、バレーボールやバスケットボール経験者ではないかと聞きたくなるくらい身長も高いが、致命的な点が二つある。
「ねぇねぇ、ちゃんとご飯食べてる?この前あげたお米全然減ってないけど……」
「ちゃんと食ってるさ、一日一色ナタデココゼリーをな」
 一つはかなり細身な点。ガリガリとも言っていい。身長が高いため余計にそれは際立ち、少々不気味でもある。
「あと球道さん、も少し身なりをきちんとしませんか?」
「俺の勝手だろ。あ、ちゃんと一昨日は風呂入ったからな。先週は洗い物もしたし、先月は洗濯もした」
 そしてもう一つは、この上なく身の回りのことに無頓着なことだ。
 髪は伸ばしっぱなし、一週間に一度風呂には入ればいい方、ゴミ捨ては基本しない、洗濯は月に一度エトセトラ……。
「ま、いいや。それよりキュウちゃんにお願いがあるんだけど……」
「いいぜ。報酬は……そうだな、スク水の上に剣道の防具を着けた写真を撮らせてもらおうか」
 二つではなく三つあった球道が持つ致命的な点……マニアックすぎる趣味。
 そんな球道だが、ソラは球道の腕を見込んで顔を引きつらせながら条件を呑んだ。


作品名:察人姫-第弐話- 作家名:朝朽 司