察人姫-第弐話-
「それは調査しやすいな。けどなんで分かったんだ?」
「ゼッケンだよ。みんな着替えた体操服にはゼッケンが縫い合わせてなかったんだよ。それでね、ユーイチがお風呂行ってる間にアタルに聞いたら、五日間の中で初日だけゼッケンは誰も付けてないの。ゼッケンが配られた日だから」
「なるほどな、それで初日ってことが分かったんだな」
「うん、そしてここからが本当のグッドニュースなんだけど……その初日に更衣室の割り振りで手違いがあったみたいで、エリートクラスの七組とスポーツ特進クラスの八組だけ三年生と二年生が逆になってたの。次の演習の日から正しいクラス分けにしたらしいけど」
「ってことは……」
「門田が買ったデータの更衣室Aと更衣室Bは全く同じアングルで撮られていたことから、ゼッケンがあったことから違う日に撮影されたもの。つまり仕掛けた犯人は移動してない三年生の五組か六組にいる」
単純計算で先程挙げた候補が半分に絞られる。正にグッドニュースである。
「しかもしかも」
「なんだ?まだ何かあるのか?」
「六組は理系のクラスなの。つまり、男子が多くて女子が少ない……」
その結果七十一あった女子の数は二十七人。五組が十九人で六組が八人。
「なるほどな。で、ここからどうする?またあの質問をするのか?」
「ううん、あれは意図が犯人にバレているかもしれないからしないよ。今からやるのは犯人じゃない子のチェック。ハーフパンツに刺繍された名前から犯人じゃない子を探していく」
「……もし敢えて犯人が映ってたら?」
「それはないよ。あってもかなり近い子だけ。だって鞄から遠い所でわざわざ着替えないでしょ?」
「そうかい。ならその役目はお前に任せるぜ?僕はできないし」
「うん、だからユーイチにはこれをお願いしたいの」
そう言ってソラがユーイチに渡したのは二枚のA4用紙。一番上に“コミュニティ論”と書かれてあり、“現代に適したコミュニティの在り方について1500字程度でまとめよ”というテーマの小レポートだった。
「お前……締切明後日なのにまだやってなかったのかよ?」
「だって早めに出題されると忘れるんだもん」
「よし、美奈子さんに言いつける」
「それはダメー!」
そんなやり取りをしつつ、ソラは調査に、ユーイチはレポートに取りかかった。